予備自衛官は裁判員になれるか?
- 結論:YES。ただし招集期間中を除く
- 裁判員法15条18号では、国会議員・裁判官・検察官・弁護士・司法警察職員などと並び、自衛官を就職禁止事由として定めている
- では自衛官の定義とは何か?
- 「自衛官」は、狭義の自衛官(常勤のみ。定員内)と、広義の自衛官(非常勤、定員外。すなわち予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補を含む)に分かれる
- 広義では、常勤特別職国家公務員および非常勤特別職国家公務員として、日本の防衛省の特別機関である「自衛隊の任務を行う防衛省の職員」と定義されるため、予備自衛官(非常勤特別職国家公務員)も含まれるように思われる
- ここで常勤自衛官が該当することは自明の理であるが、非常勤自衛官のうち予備自衛官が、「自衛官」に該当するのかが問題となる
- これについては自衛隊法66条及び70条で下記のように定義されている
- 「自衛官」は、狭義の自衛官(常勤のみ。定員内)と、広義の自衛官(非常勤、定員外。すなわち予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補を含む)に分かれる
- すなわち、「防衛招集・国民保護招集・災害招集」を受けて出頭した日から招集解除日までは、防衛大臣の命令により「自衛官」となるため、裁判員となることができないと解することができる
自衛隊法
(予備自衛官)
第六十六条 予備自衛官は、第七十条第一項各号に規定する招集命令により招集された場合において同条第三項の規定により自衛官となつて勤務し、第七十一条第一項に規定する訓練招集命令により招集された場合において訓練に従事するものとする。
2 予備自衛官の員数は、四万七千九百人とし、防衛省の職員の定員外とする。
(防衛招集、国民保護等招集及び災害招集)
第七十条 防衛大臣は、次の各号に掲げる場合には、内閣総理大臣の承認を得て、予備自衛官に対し、当該各号に定める招集命令書による招集命令を発することができる。
(中略)
3 第一項各号の招集命令により招集された予備自衛官は、辞令を発せられることなく、招集に応じて出頭した日をもつて、現に指定されている階級の自衛官となるものとする。この場合において、当該自衛官の員数は、防衛省の職員の定員外とする。
7 前二項の規定により招集を解除された自衛官は、次項の規定による招集命令を受けた場合又は第九項に該当する場合を除き、辞令を発せられることなく、招集の解除の日の翌日をもつて予備自衛官となり、招集の解除の日の当該自衛官の階級を指定されたものとする。
- 一方で、訓練招集期間中については、上記のような定めがなく、あくまで「予備自衛官」としての身分であるため、「自衛官」には該当しないと解釈することができる
- ただし訓練招集期間中は、原則として駐屯地内での居住義務、情報保全の関係から通信機器の持込禁止、公費より手当支給もある関係から、現実的には、裁判員の職務との兼職は難しい
自衛隊法
(訓練招集)
第七十一条 防衛大臣は、所要の訓練を行うため、各回ごとに招集期間を定めて、予備自衛官に対し、訓練招集命令書によつて、訓練招集命令を発することができる。
2 前項の訓練招集命令を受けた予備自衛官は、指定の日時に、指定の場所に出頭して、訓練招集に応じなければならない。
3 第一項の招集期間は、一年を通じて二十日をこえないものとする。
4 第一項の規定による訓練招集命令を受けた予備自衛官が心身の故障その他正当な事由により指定の日時に、指定の場所に出頭することができない旨を申し出た場合又は訓練招集に応じて出頭した予備自衛官についてこれらの事由があると認める場合においては、防衛大臣は、政令で定めるところにより、訓練招集命令を取り消し、又は変更することができる。
5 第一項の訓練招集命令により招集された予備自衛官は、その招集されている期間中、防衛省令で定めるところに従い、防衛大臣が指定する場所に居住して、訓練に従事するものとする。
- 以上より、招集期間外の予備自衛官については、裁判員法の定める就職禁止事由に抵触しないのではないかと考える
予備自衛官は自衛隊員か?
- 結論:YES
- 「自衛隊員」は、自衛隊法第2条第5項で、「自衛官」に加え下記を含むと定義されている
- 防衛事務次官などの官僚や一般事務官・技官
- 定員外職員
- 自衛官候補生
- 即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補
- 防衛大学校学生、防衛医科大学校学生、陸上自衛隊高等工科学校生徒
- 非常勤職員
- なお「自衛隊員」に含まれないのは以下のものと定義されている
- 政治任用職
- 防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛大臣補佐官、防衛大臣政策参与、防衛大臣秘書官(自衛隊法第2条第5項)
- 防衛省の審議会等の委員(自衛隊法施行令第1条第1項)
→政令で定める合議制の機関の委員 - 防衛省地方協力局労務管理課職員(自衛隊法施行令第1条第2項)
→政令で定める部局に勤務する職員
- 政治任用職
自衛隊法
(定義)
第二条 この法律において「自衛隊」とは、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛大臣補佐官、防衛大臣政策参与及び防衛大臣秘書官並びに防衛省の事務次官及び防衛審議官並びに防衛省本省の内部部局、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛会議、統合幕僚監部、情報本部、防衛監察本部、地方防衛局その他の機関(政令で定める合議制の機関並びに防衛省設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)第四条第一項第二十四号又は第二十五号に掲げる事務をつかさどる部局及び職で政令で定めるものを除く。)並びに陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊並びに防衛装備庁(政令で定める合議制の機関を除く。)を含むものとする
2 この法律において「陸上自衛隊」とは、陸上幕僚監部並びに統合幕僚長及び陸上幕僚長の監督を受ける部隊及び機関を含むものとする。
5 この法律(第九十四条の七第三号を除く。)において「隊員」とは、防衛省の職員で、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛大臣補佐官、防衛大臣政策参与、防衛大臣秘書官、第一項の政令で定める合議制の機関の委員、同項の政令で定める部局に勤務する職員及び同項の政令で定める職にある職員以外のものをいうものとする。
予備自衛官は防衛省職員か?
- 結論:YES
- 「防衛省職員」には、「自衛隊員」には含まれない防衛大臣以下の政治任命職と、「自衛隊員」(事務次官以下事務官等、常備自衛官・予備自衛官等を含む)が含まれる(国家公務員法)
- 防衛省職員
- 政治任命職(自衛隊法第2条第5項)
- 防衛大臣(第2号)
- 防衛副大臣(第7号)
- 防衛大臣政務官(第7号の2)
- 防衛大臣補佐官(第7号の3)
- 防衛大臣政策参与
- 防衛大臣秘書官(第8号)
- 一般職国家公務員(自衛隊法施行令第1条第2項)
- 防衛省地方協力局労務管理課の常勤職員(定員内)
- 防衛省地方協力局労務管理課の非常勤職員(定員外)
- 自衛隊員
- 特別職国家公務員(国家公務員法 第2条第3項第16号)
- 定員内
- 防衛事務次官
- 防衛審議官
- 防衛書記官
- 防衛部員
- 防衛事務官
- 防衛技官
- 防衛教官
- 自衛官(狭義の「自衛官」)
- 定員外
- 即応予備自衛官(非常勤)(広義の「自衛官」)
- 予備自衛官(非常勤)(広義の「自衛官」)
- 予備自衛官補(非常勤)(広義の「自衛官」)
- 防衛大学校学生
- 防衛医科大学校学生
- 自衛官候補生
- 陸上自衛隊高等工科学校生徒
- その他の非常勤職員
- 定員内
- 特別職国家公務員(国家公務員法 第2条第3項第16号)
- 政治任命職(自衛隊法第2条第5項)
国家公務員法 / 第2条第3項第16号
(一般職及び特別職)
第二条 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。
② 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。
③ 特別職は、次に掲げる職員の職とする。
十六 防衛省の職員(防衛省に置かれる合議制の機関で防衛省設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)第四十一条の政令で定めるものの委員及び同法第四条第一項第二十四号又は第二十五号に掲げる事務に従事する職員で同法第四十一条の政令で定めるもののうち、人事院規則で指定するものを除く。)