小説『査察機長』を本日読了。
「飛行機の中で読むと、臨場感が高まって良い」というレビューを見て、今回の渡航の前日にAmazon速達で購入。
で、実際に B747-400 と B777-200 の機内でやってみたら、very good!!!
著者の 内田 幹樹 氏は、全日空にて約20年パイロットとして勤務し、機長・操縦教官を勤めた方だ。
エアラインの機長は一年毎に路線審査があり、社内査察部に所属する査察機長(チェッカー)により、
査察飛行(チェックフライト)がある。この査察で機長の資質に疑義を抱くようなミスをしてしまうと、
機長の資格を剥奪されてしまう。そんな、初めてチェックフライト受ける新任機長の立場は、
日々教官にチェックを受け緊張の連続の僕の立場に似通っており、痛いほど理解できる。
なかでも「なるほど!」と激しく同意してしまったのは、
「資格を剥奪された機長は、根拠のある操縦をしているのか疑わしかった」という箇所だ。
なるほど、教官は操縦技術の巧拙を観察している訳ではなく、
頭で理解した上で、何を根拠にその操縦行動を行うに至っているのか、
を観察しているのだな、と納得。
教官経験がある筆者ならではの言葉だ。
例えば、なぜPAPIはその場所に設置されているのか、設置基準はなんなのか。
そうした基本的な事項の背景にも、過去の事故から学ばれた経験や自然科学の法則など、
れっきとした根拠が各々存在しているのだ。(・・・だろうか)
そうした基礎的で深い理解の積み重ねが、安全運行という一つの行為を形作る。
私の座学教官が、
「若手の操縦士は、シップ(航空機)を、まずはテクニック(操縦技術)で飛ばそうとする。
そして、次は頭(理論)で飛ばそうとする。
だが最後は、心(熟練の感覚)で飛ばすようになる。」
といっていた言葉を思い出した。
飛行時間2ケタに自分は、まだ心で飛ばす遙か以前であり、
技術が全く不足しているが、その操縦テクニックの根幹には、
そもそものなぜその操作をするのか、根拠をきちんと理解することの大切さを改めて噛み締めた。
実機訓練に赴く前に、ふとAmazonで本書に出会い、機内で読了することができて、本当に良かった。
また本書には、実際に機長をされていた方ならではの、
例えば、「ベルトサインの点灯だけは、気象状態を読むアナログな勘的な要素が多い」ので、
非常に悩ましく、サインオンにすると揺れずに気まずく、オフにすると途端に揺れだすので、
「揺れ止めスイッチ」と呼ぶ仲間もいる、など、といったうんちく記述もあり、ニヤリとしてしまう。