NHK土曜ドラマ「鉄の骨」、第五話最終回を観了しました。(前回エントリー)
この作品はもっと評価されていい。
NHKドラマ「ハゲタカ」、「外事警察」、「監査法人」、「国税査察官チェイス」は、
それぞれの社会的事象にスポットを当てて来た作品でした。
ただストーリーの都合上、どうしても中だるみや、ドラマっぽい演出があったのですが、
制作チームも成長してきたのか、遂に「鉄の骨」では、正義と仕事にかける職業人の真摯な誇り、
そして裏テーマである「愛」を、くさみなく描くことに成功しています。
一方的に「談合」を悪と決めつけて描かず、それをやらざるを得ない業界、
当事者の苦悩を、深く描くことで、ハリウッド的な善悪二元論あるいは勧善懲悪な
展開を避け、日本人が心根から共感できる「中庸」の和が作品に生じています。
最終話では、素直に泣いてしまいました。
NHKいい仕事してる!このDVDは出たら買う。
これは正義と愛、そしてサラリーマンを描いたドラマです。
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(ここからは、作品には直接関係のない駄文となりますが、)
そして付言するならば、お金の為に仕事をしている人には決して理解出来ない、
仕事に対する飽くなき情熱と真摯さ、そして職業人としての誇りを教えてくれました。
「合理的経済人」を前提とする机上の学問やゲーム理論は、ここでは通用しません。
お金の為ではない仕事、してみたいです。。
(作品中では、アンチテーゼとして「銀行員の彼女」が出てくるのですが・・・。)
思うに、巨万の富を築いた後に、某トレーダーや、ビル&メリンダや、某創業社長などが、
突然、手のひらを返したように、慈善だボランティアだ孔子だと言い出し始めるのは、
結局のところ、築いた富だけでは社会的に評価されない、というところにあるのでしょう。
いくらうまいことやってべらぼうに稼いでも、社会的評価はついてきません。
100億稼いだところで、我が国の負債を肩代わりするには焼け石に水ですし、
美辞麗句並べて群がってくるのは、貴方の人格に陶酔した者ではなく、
そのお金をお目当てとする方々です。
またマネーの力も有限です。
その辺の人に、「10億やるから親を刺せ。」と買収しかけても、やる人は少ないでしょうし、
マネーも局面によっては倫理に左右される行動様式は超えられず、無力です。
(逆説的には、倫理観を操作すれば、マネーを拠出させることは簡単そうです。宗教のように。)
刑事ドラマや水戸黄門も、社会正義の為に努力する姿が我々には魅力的に映るわけで、
もし「ホシ一人あげたら特別報奨金一千万円」、「悪代官成敗一件につき百万石」、とかいう設定で、
「よーし、ホシ上げて住宅ローン繰上返済しちゃうぜ!見てろ被疑者X!」とか、
「迅速な案件処理と的確な調書作成で、人事評定の点数稼いで、課長代理に昇進してやるぜ。」
とかいうマインドで捜査に取り組んでいることが明らかにされていたら、動機の底の浅さに幻滅しちゃう訳です。
あくまで捜査の原始的なモチベーションは、社会悪に対する正義心から来る義憤でないと。。。
(とはいってもサラリーマンである以上、現実には動機の3~4割くらいは、そういうのもあるのでしょう。)
以上、色々と言ってはみても、未だマネーの呪縛から解脱できない小生がそこにいて、
目先のお金の為に、shit work にしこしこと励む社畜な現実がそこにはあるんですね。
ああ無情。
大人の世界は、白でも黒でもなく、濃淡入り混じった灰色ということなのでしょうか・・・。
それにしても、貴兄がドラマで泣くとは意外です・・・。