第三波到来。
朝7時、48階の株式営業の担当セールスから朝会のメールが届かない。
トレーディングの友人よりチャットで、
「営業の処刑が始まってる。20%は行く勢い。」
いわく、昨年結婚したばかりの、セールスはアウトだったと教えてくれる。
社内Webで見ていると、死刑宣告された人のPCのアカウントが削除され、
メールアドレスが次々に消えていく。同期も3人逝く。
午後三時。
日本株は前日比プラスより一転して、前日比3円安の7,457円で引ける。
円安気味。ポートフォリオも-3bpsほどのちょい負け。
明日に月末を控え、嫌な地合いだ。
そんな中、イギリス人の上司がガラス張りの個室を出て、47Fにでかける。
ほどなくして向かいの席の女性の電話が鳴った。
ピロ・ピロ・ピロと短く三回、内線呼び出し音だ。
足早に呼び出された会議室へ向かう彼女。
・・・そして10分ほどして戻ってきた彼女はうつむき加減。
蚊の鳴くような声で「私、本日で終わりになりました。」と告げた。
どんな顔をすれば良いかわからず、顔をこわばらせながら「ああ、どうも。」
と情けない声で僕は答えた。
空気が固まり、他の島に座っているチームの人も聞き耳を立てる。
Sudden silence..
(一瞬の静寂が場を支配することを「妖精が通った」っていうのだっけ、
などと考えながら、自分たちが切られた訳でないのに、気まずい空気。)
永遠かと思われた緊張の時間が10分ほど続いた後に、
上司が個室へ戻ってきた。ああ自分は救われた、という安堵の瞬間。
向かいの女性は、手荷物だけ持ってチームのみんなに、とても小さな声で、
「ありがとうございました。」といって去っていった。
その小さな背中を見送ることしかできない。
その後の緊急ミーティングで上司は、残された我々にいった。
「彼女はパフォーマンスもよく評価も高かった。
ただ単にヘッドカウントの問題でやむなく切っただけだ。
彼女に一切の非はない。」
ああ、小説で読んだ20年以上前の話がデジャブする。
当時の様子を小説で読んで疑似体験していた僕は、
まったく同じ光景を、まさにリアルに満ちた緊張を、
胃液が逆流するような気分で再び味わっていた。。。
<出典>