目に留まった都々逸より。
『三千世界の鴉を殺し 主(ぬし)と朝寝がしてみたい』(高杉晋作)
諸ソースの情報を纏めると・・・
高杉が通い詰めていた遊郭で、後の愛妾となる遊女「うの」に向けて、三味線片手に即興で歌った戯れ歌といわれる。
三千世界(三千大千世界)とは、仏教用語で「あらゆる世界」という意味。
(須弥山を中心に、小世界の千倍が小千世界、小千世界の千倍が中千世界、中千世界の千倍が三千大千世界。つまり三千倍ではなく千の三乗である。1人の仏が教化できる範囲とされる。)
【通説=独占欲】
カラスとは、遊女が客と取交わす「浮気しない」という約束の念書を、熊野の神様に届ける鳥。取交わされた約束が一つ裏切られるたびに、三羽のカラスが死んでいくとされる。あらゆる世界に棲息するカラスを、全て殺してでも、(他の様々な客と念書を取交わすほど)人気のある遊女のお前を独占し、二人だけで、ゆっくり朝まで寝たい。
【有力説=偉い人も甘えたい】
この世のルールも神仏も、自分が担ってる使命・役割も、二人の間に立ちはだかる壁もクソ食らえ、俺はこの可愛い女と寝ていたいんだ。世の中全部ぶち壊してでもいい、という破壊衝動と、ふたりっきりでほっこり、という胎内願望。お前ととずっと、こうして、一つ布団でくるまっていたいよー、もう尊皇攘夷だの、どうでもいいよー。
【少数説=八咫烏】
ここでいうカラスとは、中国神話で太陽に住んでいるとされる三本足の鴉(=八咫烏・やたがらす)である。世界中の八咫烏を殺してしまえば、太陽が出ないので、長い夜をずっと一緒に過ごせる!
ふと、「往来、All Right!」を想い出した。こちらは神道の八百万の神々だが。
俺屍(おれしか)のテーマを、都々逸・五字冠り(五七七七五)で表現すると:
『人生が 僅か二年で終わるとしたら 何を自分はするだろう』
(simisin, 2009)